近年、雑誌やTVなどでもナチュラルワインを耳にする機会が増えましたが
「ナチュラルワインって何なの?」
「ナチュラルワインは他のワインとどう違うの?」
「ナチュラルワインはどこで買えるの?」
こんな疑問をお持ちではないですか?
そこで今回は、ナチュラルワインの基本を知って頂き、おすすめのナチュラルワインをご紹介します!
1、ナチュラルワインとは 『ブドウの栽培と醸造、どちらも限りなく自然な方法で造られたワイン』
結論からお伝えすると、ナチュラルワインの明確な定義、厳密な規定がありません。
「え?じゃあ結局ナチュラルワインって言われてるものは何なの?」
ブドウ本来のポテンシャルを活かし、自然に敬意を払いつつ、ワインを作りたい。という生産者さんの想いで、試行錯誤の末出来上がったものがナチュラルワインと呼ばれるワインなのです。
生産者によって細かな違いはありますが、ナチュラルワインに共通する基本的な栽培・醸造方法をお伝えします。
①ブドウの栽培方法
ナチュラルワインに使用されるブドウの栽培方法は以下の2つがあります。
・ビオロジック農法
・ビオディナミ農法
どちらも化学肥料・農薬・除草剤・殺虫剤を使用せず、自然本来の力で栽培する方法です。
ビオロジック農法
有機農法とほぼ同じ意味で使われており、化学肥料・農薬・除草剤・殺虫剤を使いません。化学肥料ではなく、EUで認証された有機肥料を使用する生産者もいます。病害予防にはボルドー液やBT剤などの自然に存在する物質を用いた薬剤の使用を許可されています。
1980年フランスで初めて正式にビオロジック農法が認められ、2009年1月1日からEUレベルで生産規則の統一が強化され、輸入品にも同じ要求が課されるようになりました。認証を受けるには 有機農法を3年以上続ける 必要がります。
ビオロジック農法の中で、より自然に美味しいブドウを栽培するアプローチとして自然農法 、ドライファーミング不耕起栽培があります。
自然農法 自然の力を尊重し、人の干渉を最低限にすることで、土壌の力が最大限に発揮されると考える農法
ドライファーミング 雨水以外は最低限の水分のみを与え、ブドウを乾燥状態に置くことで根が地中深くまで張ってミネラル感が増すほか、収穫量は減るものの果実に凝縮味が出るメリットがある農法
不耕起栽培 耕起(農地を耕すこと)を土壌破壊とみなし、農地を耕さずに農作物を栽培する方法。除草も行わず、自然に近い状態を保つことで作物が健康になると考える農法
ビオディナミ農法(バイオダイナミクス(英)ビオディナミコ(伊)ともいう)
オーストラリアの人智学者、ルドルフ・シュタイナーが1924年に行った「農法講座」に基づき「自然な環境で土壌と植物を保全し、価値を与える取組み」といった考え方から設立された農法。
宇宙や動物との調和、月や惑星などの天体の動きに配慮した農業歴(太陰暦)に従い栽培を行います。「ブドウの種蒔きカレンダー」があり、種まきなどのタイミングはそれに則します。少し哲学的ですね(笑)
ロマネコンティなどの有名ワイナリーもビオディナミ農法を取り入れているんです!
ビオディナミ農法で一番の特徴としては、有機肥料です。
牛糞やたんぽぽなどを牛の角や腸に詰めて土の中で寝かせたもの。カシの樹皮を家畜の頭蓋骨に詰めて発酵させたもの。など特有の天然調剤(鉱石・植物)だけを使います。土壌の微生物の働きを高めることは、良質なブドウを栽培するためには必須条件と言えます。
亜硫酸SO2(酸化防止剤)を使わない、または極限まで使わない(原則30ml前後まで)
亜硫酸にはワインの酸化防止以外に微生物の殺菌作用もあります。
自然(野生)酵母で発酵させている
自然なブドウ栽培を行っているブドウ畑やセラー(醸造場)には沢山の自然酵母が存在しており、ブドウが育った土地環境の個性、いわゆるテロワールが大きく反映します。
スタンダードワインの発酵はエアコンによる温度コントロールや亜硫酸による発光コントロールを行い2週間ほどで発酵完了しますが、自然な造りの発光の場合はブドウ本来のペースで、ゆっくり発酵させる為、半年〜数年かかるケースもあります。
③分類・表記の違い
英語 | 日本語 | フランス |
ナチュラルワイン | 自然派ワイン | ヴァン・ナチュール |
オーガニックワイン | 有機栽培ワイン | ビオワイン(ビオロジックの略称) |
バイオダイナミックワイン | 生命力動農法ワイン | ヴァンビオディナミ(天体) |
最近「ナチュール・ワイン」と聞くことがありますが、これはフランス語と混ざった言い方で間違いです。
2.ナチュラルワインは二日酔いしないって本当?
この噂はよく聞きますが、科学的根拠はありません!
ほぼ全てのワインに入っている酸化防止剤が頭痛、吐き気の原因を引き起こすと思われて、添加物、化学物質などが少ないナチュラルワインは、「頭痛がない」「二日酔いしない」と間違った解釈をされています。
「ワインを飲むと頭痛がする」
「頭痛がするから二日酔いだ」
そう思っているあなた。もしかしたら『ワイン不耐性』かもしれません!
「ワイン不耐性」とは、ワインの中に含まれるある物質によって引き起こされる頭痛、吐き気、紅潮、等々の症状の事です。この原因はアルコールが肝臓の機能によって分解された際に生じるアセトアルデヒドの毒性によることが分かっています。
『マスターオブワイン』であるソフィー・パーカー・トムソンの研究によって、「ワイン不耐性」の原因が「生体アミン」であり、その中でもヒスタミンが主因であると特定され、頭痛や体の不調は「亜硫酸塩」「酸化防止剤」が原因では無いことが証明されました。
白ワインは大丈夫なのに赤ワインを飲むと頭痛になるという人は「ヒスタミン」が原因の可能性が高いです。
ちなみにワインと一緒に食べられることが多いチーズですが、こちらもチラミンが多く含まれていることから、「チーズとワインと一緒に摂取すると頭痛になりやすい」とも言われています。
ナチュラルワインでも、スタンダードワインでも「ワイン不耐性」が起こる可能性があり、個々の体質によっても変わるので、二日酔いしないとは言えません。
それぞれに合った適量でお酒を楽しむ事が大切ですね。
3.初心者におすすめワイン5選
シリーズ名:アンスーシアント・オレンジ Insouciente Orange(オレンジ)
生産者名:オリヴィエ・コエン Olivier Cohen
ブドウの品種:グルナッシュ・ブラン、サンソー
ワインの産地:フランス ラングドック
栽培:ビオロジック
生産者のオリヴィエ・コエンは法律を学び、働いていたナチュラルワインショップでその魅力に取り憑かれ、その後わずか3年で自分の7.5haあるドメーヌを立ち上げました。初ヴィンテージが2014年。底抜けに明るく、太陽の様な彼の周りには沢山の人が集まります。
ほんのり濁りのあるオレンジ色をしています。ピーチティーやオレンジピールの様なフレッシュな酸味もあり、魚やスパイシーな料理にも合います。
オリヴィエ・コエンの人柄がそのまま味に現れるように、若々しさもありながら明るいパワフルな味わいを感じて下さい。
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シリーズ名:ゲシクトル シュルック Le Schlouk(オレンジ)
生産者名:フレデリック ゲシクト Frederic Geschickt
ブドウの品種:ゲヴュルツトラミネール、リースリング
ワインの産地:フランス アルザス
栽培:ビオディナミ
ワイン名は『ひとくち』の意味。ライチや完熟の白桃、ホワイトペッパーといったアロマの宝庫。オレンジワインらしいパワフルさと複雑味がしっかりあります。余韻に感じるレモンティーのようなエレガントな味わい。
兄の死を乗り越えて引き継いだ弟のフレデリック。生まれ持ったブドウ栽培のセンスと元々ミュージシャンである感性のセンスが、フレッシュで弾ける酸味に現れており自然と笑みが溢れます。
「旨味を石灰質土壌から。ミネラル感を表土にある花崗岩、石英石などから得ている。」
byフレデリック
先祖から引き継いだ化学肥料漬けの農場をビオディナミ農法に切り替えて、5年程で見事に土壌を生き返らせました。畑のエネルギーを吸収したゲヴュルツトラミネール(ブドウ)の濃厚な味わいと、フレデリックの感性によって生まれたフレッシュな酸味を感じて下さい。
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シリーズ名:サプカイ ブラン NV Sapukai blanc(白)
生産者名:フランソワ・エコ Francois Eco
ブドウの品種:チャレッロ、ミュスカ、ダレクサンドリー
産地:フランス ブルゴーニュ
2021年のブルゴーニュは酷い天候で、本来ワインになる予定だったぶどうは壊滅的でした。
そこで友人であるスペインのマネルにアプローチし、奇跡のコラボが実現。
スペインのマネルの畑で手摘み収穫したブドウを、フランスのフランソワの蔵で醸造といった新しい方法で作られました。
スペインならではの口当たりの良いフルーティーな味わいと、フランスのブルゴーニュならではの柔らかな酸と余韻のコクを味わう事ができます。
奇跡の「友情ワイン」をご堪能ください。
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シリーズ名:ワイルドポニーWILD PONY(オレンジ)
生産者名:エコロギッシュ ヴァイングート シュミット
ブドウの品種:グラウブルグンダー・リースリング・シルヴァーナー・ゲルバー・ムスカテラー
産地:ドイツ
栽培:ビオディナミ、収縮膨張土壌、草生栽培、手摘み収穫。
天然酵母による発酵。古いバリックで15ヶ月熟成。フロール酵母で6ヶ月熟成。
ドイツのワイナリーで生まれたシュミットの息子ダニエル。
醸造学校卒業後ナチュールの勉強修行がしたいビアンカは名だたるワイナリーに手紙を送り唯一返事が来たのがシュミット。
ナチュラルワインを通して意気投合したダニエルとビアンカは結婚し、2010年に2人で新しくワイナリーを立ち上げました。
太陽や月の力、大地の力、天然酵母菌の力など自然の中で育まれるパワーを最大限に引き出して作られるワインをご堪能ください。
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シリーズ名:ヴードゥー・ドール Voodoo Doll(白)
生産者名:エコロギッシュ ヴァイングート シュミット
ブドウの品種:リースリング
産地:ドイツ
認証:∗デメター、∗ユーロリーフ
茶系石灰質、収縮膨張土壌、草生栽培、手摘み収穫。ビオディナミ。
天然酵母による発酵。マセラシオンは3〜4日間。トノー樽で15ヶ月間熟成。無清済、無濾過。
∗デメター
ドイツで最も古い民間認証団体。ビオディナミ農法と呼ばれる方法で生産された農作物や製品にのみ認証マークが付与されます。世界で最も基準が厳しいオーガニック認証の1つとされています。
∗ユーロリーフ
EUのオーガニック認証マークで、EUの有機農業規則に従って生産された農産物や加工品に付与されます。栽培から消費に至るまでの全ての過程において、EUの規定に則った周期的な検査を受ける必要があります。加工品においては原料の95%以上がオーガニックであることを証明する必要があります。
白ワインではありますが、とろけるような蜜感があり塩味のある生ハムやブルーチーズがよく合います。
エチケットには「ブードゥー人形が代わりに酔っぱらってくれるから、たくさん飲んでね♡」
ワイルドポニー同様に生産者さんのお茶目さが感じられる可愛らしいエチケットです。
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4.東京でナチュラルワインが飲めるお店5選
ウィルトスワイン自由が丘
virtuswineの2店舗目となるワインのセレクトショップ
日本のナチュラルワインやスタンダードワインも取り揃えています。
角打ちがあり、定期的に比較試飲セットも楽しむ事ができます。
ワインセラーの中も自由に見ることができ、値段と産地で綺麗に陳列されていました。
店員さんと自分の好みや栽培方法などの希望をお伝えし相談しながら購入も出来ます。
目黒区緑が丘2-24-8 090-4405-3670 12:00-21:00角打ちは20:30まで 月曜:定休
https://www.instagram.com/virtuswine.jiyugaoka/
WINES&THINGS(東京・中目黒)
人気のカフェ「neel」などもひしめき合うエリア
2023年にオープンした打ちっぱなしのガラス張りでオシャレな店内は、昼間から女性お一人様も来られる気軽さが感じられます。
後ろにはワインセラーから購入することもでき、気さくな女性ソムリエが気になるボトルの細かな説明をしてくれます。
東京都目黒区青葉台1-29-12
中目黒駅から徒歩7分
火〜土 15:00〜22:00
日祝 13:00〜19:00
月曜:定休
https://www.instagram.com/winesandthings.shop/
ワインスタンド・ワルツ
本当にこんなところにあるのかと心配になる細い小道に、静かにひっそりとある小さなスタンド店。店主の大山さんと少し言葉を交わせば分かる、大山さんだからこそ選んだその場所。
まず聞かれるのは「白と赤どちらにしますか?」
毎日、白と赤それぞれ2種類用意されており、説明を受けてこちらが選択するスタイルです。
8人程度でいっぱいになる店内には、大山さんの作り出すお店の雰囲気と個性的なナチュラルワインを楽しみに来るお客さんで賑わっていました。
店主特製のケークサレと共にナチュラルワインを楽しむことが出来ます。
東京都渋谷区恵比寿4-24-3 シマダビル1F
恵比寿駅徒歩10分
19:00頃〜25:00頃
日曜:定休
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13149203/
ナチュラルワイン&フード専門店 トロワザムール 3amours
ナチュラルワインのインポーター会社が創業したナチュラルワイン専門店のパイオニア。
インポーターならではの強みでる造り手との直接的な繋がりにより、造り手の想いを聞く事ができ、ここでしか手に入らないナチュラルワインもあります。
ナチュラルワイン好きな店員さんに聞けば、今飲みたいナチュラルワインをセレクトしてくれます。2階にはバーがあり、最適な温度などの状態を考慮してナチュラルワインを飲む事が出来ます。
〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西1-15-9 DAIYUビル1F・B1F
AM12:00〜20:00
月曜日:定休
03-5459-4333
https://3amours.com/
ル シェーヌ
マルセルラピエールの元で修行したオーナー・ソムリエ・シェフの飯野瑞樹さんがお店に立つフレンチバル。ランチ直前のオープンと同時に入店すると、カウンターに座りオーナーの飯野さんと直接お話しすることが出来ました。
巨匠マルセルとのエピソードや、日本でナチュラルワインを広める為に奮闘した仲間とのかけがえの無い時間など、貴重なお話を聞く事ができ幸せな時間でした。
12時を過ぎた頃に続々とお客さんが来店して来たので、飯野さんとお話できるタイミングが良かったです。
その日の気分と料理に合う白と赤のナチュラルワインをセレクトして頂きました。
どちらも安定した味わいで、クセが無く料理と合う事を大事にされていました。
東京都港区南青山2-13-15
ランチ:平日11:30〜15:00 土祝12:00〜15:00
ディナー:平日17:30〜23:30 土祝17:30〜22:00
日曜:定休
https://www.le-chene-aoyama.com/ https://tabelog.com/tokyo/A1306/A130603/13219098/?cid=yo_g_kw_shop_vh_tokyo_13219098&gad_source=1&gclid=CjwKCAjw6JS3BhBAEiwAO9waF8rSrIDy4YMA-EGv9NoXL2r_R_-w8eKi2hvPpDHC23Gw6Pj1U3HxyRoCvToQAvD_BwE
まとめ
ナチュラルワインは、自然が持つ本来のエネルギーを引き出しながら栽培・醸造に考慮して造られており、テロワールが強く反映されます。ブドウ
本来の個性が際立つナチュラルワインの美味しさは、生産者の土地・ブドウに対する熱い想いの形なのです。
ナチュラルワインの基準やルールを明確にしないからこそ、1本1本に個性を感じられて、自分好みのナチュラルワインを発見した時は、宝を見付けたかの様な興奮があります。
ナチュラルワインの魅力が少しでも伝わり、興味を持って頂けたら嬉しいです。
今後あなたにとってお気に入りのナチュラルワインに出会えますように。
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